先月おいでになったが、急いで御帰宅され本意無く思っております。
さて蒙古国の牒状が到来したことに対して上一人より下万民に至るまでが驚き騒いでおりますが、しかしながら誰もその原因を知りません。日蓮はかねてより存じていたので、既に一論を造ってこのことを進覧しました。兆しが先にあらわれて災いは必ず後に来ます。去る正嘉元年丁巳八月廿三日戌亥の刻の大地震がさながらこの瑞相ではないでしょうか。法華経には「如是相」とあり、天台大師は「蜘蛛が下りれば喜ばしい事がおこり、カササギが鳴けば来客がある」といわれております。易経には「吉凶ともに異変があって生ずる」とあります。これらの本文にどうして間違いがあるでしょうか。所詮諸宗の帰依を止めて一乗妙経を信受されるべきとの勘文を捧げました。日本国の滅びる根源は浄土・真言・禅宗・律宗の邪法・悪法から起こる。諸宗を召し合わせて諸経の勝劣を分別していただきたい。殊に貴殿は相模の守殿と同姓です。根本が滅するならば枝葉がどうして栄えることができるでしょう。早く蒙古国を調伏し国土を安穏にしていただきたい。法華を誹謗する者は三世諸仏の大怨敵です。天照太神・八幡大菩薩等がこの国を見放したので大蒙古国より牒状来たのでしょう。今後は各々が生け取りとなり他国の奴隷となるでしょう。この趣きを方々へ警告のため愚状を進上いたしました。恐恐謹言。