同志と共に

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西山殿御返事にしやまどのごへんじ

あまざけ一をけ・やまのいも・ところせうせう給了んぬ、梵網経と申す経には一紙・一草と申してかみ一枚くさひとつ・大論と申すろんには・つちのもちゐを仏にくやうせるもの閻浮提の王となるよしを・とかれて候。 これは・それには・にるべくもなし・そのうへをとこにもすぎわかれ・たのむかたもなきあまのするがの国・西山と申すところより甲斐国のはきゐの山の中にをくられたり、人にすてられたるひじりの寒さにせめられて・いかに心ぐるしかるらんと・をもひやらせ給いて・をくられたるか、父母にをくれしよりこのかた・かかるねんごろの事にあひて候事こそ候はね、せめての御心ざしに給うかとおぼえてなみだもかきあへ候はぬぞ、日蓮はわるき者にて候へども法華経は・いかでか・おろそかにおわすべき、ふくろはくさけれども・つつめる金はきよし・池はきたなけれどもはちすしやうじやうなり、日蓮は日本第一のえせものなり、法華経は一切経にすぐれ給へる経なり、心あらん人・金をとらんと・おぼさば・ふくろをすつる事なかれ、蓮をあひせば池をにくむ事なかれ、わるくて仏になりたらば法華経の力あらはるべし、よつて臨終わるくば法華経の名をりなん、さるにては日蓮はわるくても・わるかるべし・わるかるべし、恐恐謹言。