同志と共に

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上野殿御書うえのどのごしょ

態と御使い有難く候、夫れについては屋形造の由目出度くこそ候へ、何か参り候いて移徙申し候はばや、一つ棟札の事承り候書き候いて此の伯耆公に進せ候。 此の経文は須達長者・祇園精舎を造りき、然るに何なる因縁にやよりけん須達長者七度まで火災にあひ候時・長者此の由を仏に問い奉る、仏答えて曰く汝が眷属・貪欲深き故に此の火災の難起るなり、長者申さく・さていかんして此の火災の難をふせぎ申すべきや、仏の給はく辰巳の方より瑞相あるべし・汝精進して彼の方に向へ、彼方より光ささば鬼神三人来りて云わん、南海に鳥あり鳴忿と名く此の鳥の住処に火災なし、又此の鳥一つの文を唱うべし、其の文に云く「聖主天中天迦陵頻伽声哀愍衆生者我等今敬礼」云云、此の文を唱へんには必ず三十万里が内には火災をこらじと・此の三人の鬼神かくの如く告ぐべきなり云云、須達・仏の仰せの如くせしかば少しもちがはず候いき、其の後火災なきと見えて候、これに依りて滅後・末代にいたるまで此の経文を書きて火災をやめ候、今以てかくの如くなるべく候、返す返す信じ給うべき経文なり、是は法華経の第三の巻化城喩品に説かれて候、委しくは此の御房に申し含めて候、恐恐謹言。