同志と共に

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守護国家論(しゆごこつかろん)

この悪義を破る為にまた多くの書が著された。いわゆる浄土決義鈔・弾選択・摧邪輪等である。この書を著した人は皆、碩徳の名を天下に知られた人々であったが、残念ながらいまだ選択集の謗法の根源を顕わさなかったため、かえって悪法の流布を増してしまった。たとえば、ひどい旱魃の時に小雨を降らせば草木はますます枯れ、弱兵を先にやれば強敵がますます力を得るようなものである。
私はこの事を嘆くゆえ、一巻の書を著して選択集の謗法の理由を明らかにする。名づけて守護国家論と呼ぶ。願わくは一切の僧侶と在家が一時の世間の俗事を止めて、永劫の善苗を種えてもらいたい。今、経と論をもって邪正を直す。信じるか非難するかは仏説にまかせ、自分勝手な意見によってはならない。
この書は分けて七段とする。
一段では如来が経・教において権・実二教を定められていることを明かす。
二段では正・像・末における教法の興廃を明かす。
三段では選択集の謗法の理由を明かす。
四段では謗法の者を対治すべき証文を出す。
五段では善知識並びに真実の法には会い難いことを明かす。
六段では法華経・涅槃経によって行者の用心すべきことを明かす。
七段では質問に従って答えを明かす。
大文の第一に、如来が経・教において権・実二教を定められていることを明かす。
これにはまた四段がある。
一には大部の経の順序を出して同類に分類する。
二には諸経の浅深を明かす。
三には大・小乗を定めることを明かす。
四にはとりあえず権教を捨てて実教に付く理由を明かす。
第一に大部の経の順序を出して同類に分類する。
問う。
仏は最初に何なる経を説かれたのか。
答える。
華厳経である。
問う。
その証拠とは。
答える。
六十華厳経の離世間浄眼品にこうある。
「このように私は聞いた。一時、仏は摩竭提国の寂滅道場において初めて覚りを開いた」
法華経の序品には、放光瑞[仏がまさに法華経を説こうとする時、眉間の白毫から光を放ち東方万八千の世界を照らしたこと]の時、弥勒菩薩が十方世界の諸仏の五時[華厳時・阿含時(鹿苑時)・方等時・般若時・法華涅槃時]の順序を見て、文殊師利菩薩に質問した言葉がある。
「また聖主師子である諸仏が経典の微妙第一であることを演説された時、その声は清浄にして柔軟であり、諸の菩薩を教えられたことが無数億万であることを見た」
また方便品にこうある。
「仏が自ら初成道の時を説いて、"私は初めて道場に坐り、樹を観ながらまた散策した。(中略)その時に多くの梵王、多くの神々、帝釈天、世界を護る四天王、大自在天、そのほか多くの天の衆、その仲間の百千万が、恭敬して合掌し礼して、私に転法輪[仏の教え]を請うた"」