同志と共に

ところが権経を依経とする人師は節度もなく法華等を観経等の権説と同じとし、法華・涅槃等の義を仮りて浄土三部経の徳とし、決定性の二乗・無性の一闡提・常没の衆生の往生を許している。権実雑乱の罪は脱れ難い。例えば外典の儒者が内典を盗んで外典を飾ったようにである。謗法の失は免れ難いであろう。仏は自ら権実を分けられた。その要旨を探ってみると、決定性の二乗・無性有情の成・不成である。しかるにこの義を弁えない訳者は、爾前の経々を訳す時、二乗の作仏・無性の成仏を許した。この義を知る訳者は爾前の経を訳す時、二乗の作仏・無性の成仏を許さなかった。これによって仏意を覚らない人師もまた爾前の経でも決定性・無性の成仏を明かすと見て、法華と爾前は同じであると思ったり、爾前の経で決定・無性を退ける文を見て、その義をもって了義経とし、法華・涅槃を不了義経とした。これらは仏意を覚らず、権・実二経に迷っているのである。これらの誤りを出すならば、ただ源空一人に限るのみだけではなく、インドの学者や訳者から中国の人師に至るまでその義はある。いわゆる地論師・摂論師が釈尊一代の別時意趣、善導・懐感の法華経の一称南無仏の別時意趣等はすべて権・実を弁えないために出来した誤りである。論を著す菩薩・経を訳す三蔵・三昧発得の人師ですらこのようである。まして末代の凡師はなおさらである。
問う。
あなたは末学の身として、なぜ論師や訳者・人師を破折するのか。
答える。
あえてこのような論難をしてはならない。摂論師並びに善導等の釈は権・実二教を弁えないで、みだりに法華経を別時意趣と立てるために、天台や妙楽の釈とは水火の違いがある。そこで人師の相違はさしおき、経論について是非を問うたところ、権・実の二教は仏説より出たものであり、天親・竜樹は重ねてこのことを定めている。この義に順じる人師をばしばらく仰ぎ、この義に従わない人師はしばらく用いないのである。自分勝手な考えで是非を定めているのではなく、ただ相違を出しているだけである。
大文の第四に、謗法の者を対治すべき証文を出す。
これには二つある。
第一には仏法を国王・大臣並びに四衆に付属することを明かし、第二には正しく謗法の人が王の地にいるのを対治すべき証文を明かす。
第一に仏法を国王・大臣並びに四衆に付属することを明かす。
仁王経にこう説かれている。
「仏が波斯匿王に告げた。(中略)この故に諸の国王に付属して比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷に付属しない。