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どうしてかというと、王の威力を持たないからである。(中略)この経の三宝を諸の国王・四部の弟子に付属する」
大集経二十八にはこうある。
「もし国王がいて我が法の滅するのを見て、捨てて擁護しなければ、無量世において施戒慧を修するとも、ことごとくすべて滅失し、その国に三種の不祥の事をおこすであろう(中略)・命が終わって大地獄に堕ちるであろう」
仁王経の文の通りなら、仏法をまず国王に付属し、次に四衆に及ぼす。王位に居る君主・国を治むる臣下は仏法を根本として国を治めるべきである。
大集経の文の通りなら、王や大臣等が仏道の為に無量劫の間、頭目等の布施を施し、八万の戒行を持ち、無量の仏法を学んでも、国に流布する法の邪正を直さなければ、国中に大風・旱魃・大雨の三災が起こり、万民を逃げ出させ、国王・臣下は必ず三悪道に堕ちるであろう。
また雙林最後の涅槃経の第三にはこうある。
「今正法を諸王・大臣・宰相・比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷に付属する。(中略)法を護らない者をば禿た居士と名づける」
またこうある。
「善男子よ、正法を護持する者は五戒を受けず、戒律を修めなくても、まさに刀剣・弓矢・鉾槊を持つべし」
またこうある。
「五戒を受けなくても正法を護ることをもって、すなわち大乗と名づける。正法を護る者は応に刀剣・器杖を執持すべし」
四十年余りの中にも梵網等の戒によるなら、国王や大臣の諸人等も一切、刀杖・弓矢・矛や斧などの闘戦の道具を畜えることを禁じている。もしこれを畜える者は必ず現世の身において、国王の位・比丘・比丘尼の位を失い、後生は三悪道の中に堕ちると定められている。
しかし今の世は道俗の区別なく弓箭・刀杖を帯している。梵網経の文の通りであるなら必ず三悪道に堕ちることは疑いの無いものである。涅槃経の文が無ければどうしてこれを救うことができようか。また涅槃経の先後の文の通りであるならば、弓箭・刀杖を帯して、悪法の比丘を治し、正法の比丘を守護する者は、前世の四重罪・五逆罪を滅して、必ず無上道を証得するであろうと定められた。
また金光明経の第六にこうある。
「もし人がいてその国土にこの経ありといえどもいまだかつて流布せず、捨てて離れる心を生じ、聴聞することを願わず、また供養も尊重も讃歎もせず、四部の衆の持経の人を見ても、またまた尊重も供養もすることはない。遂に我等及びその眷属や無量の諸天に対して、この甚深の妙法を聞くことができないようにする。
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